2009年7月5日日曜日

世の中便利に…烏口に思う








某仕事において、印刷物を制作することになった。

いや、なったという表現より、日々その繰り返しなの
だが…。

遠い昔は、印刷というと、印刷会社の営業マンがいて、
電話をすると、すぐに飛んできてくれて、印刷物の版下、
いわゆる印刷するための原稿を手渡し、コト細かく指示
をしていた。

版下、そう、時代は写植の頃。
写真植字のことであり、写真植字機をつかい、印画紙に
文字を出力して、その出力された文字を切り貼りするこ
とで、紙面をレイアウトしていく。

文字をレイアウトし、写真の位置を確保し、その確保し
た写真位置に、写真をトリミングするのだが、版下の上
にトレーシングペーパー(トレペ)なるモノをかぶせ、そ
のトレペに写真のアウトラインを書き込んでいく。

文字は何色にするか、写真はどう加工するか、一つ一つ
詳細情報をトレペに書き込み、写真は「ポジフィルム」
として手渡す。そして、やっと完成…、それを印刷所の
担当者に手渡す…。

当時のデザイナーという職種は、これは感性の職業であ
たと思う。今ではコンピュータという優れたマシンが、
ボタン一つで上記の作業を瞬時に対応してくれるのだが、
当時は、その仕上がりを「頭でイメージする」ことが何
よりデザイナーとしての力量であったのだ。

最近のデザイナーは、大変に良き時代に恵まれていると
思う。基礎という経験値を積まぬとも、1mmという幅の
中に罫線を瞬時に描けてしまう。

昔、私たちは「烏口」(カラスのくちばしのような形を
したペンのこと)というペンを使い、ペン先を研い
で極細にし、そして…1mmの幅に何本もの罫線を書き
こんだものだった。

それを全てコンピュータが代行してくれる。
写真のトリミングも、色の分解も、文字の大きさや行
間の詰めも瞬時、画像を歪ませることも、写真に写り
込んだいらない電柱や電線、人間までも消すことも簡
単。フォントだって恐ろしく大量にある。

だから、最近の「お見合い写真」は相当怖いらしい…。

昔話はこの程度にして…
印刷の話に戻るが、今では全てのデザインはデジタル
化し、インターネットを通して全て印刷入校も可能と
なった。

私自身も、日々の作業は全てデジタルで処理している
のだが、その短縮化された時間を「本来のデザイン」
という考える時間に充てている。
この考える時間を排除してしまったら、デザイナーと
いう職業を辞めてデザイン作業員にならざるを得ない。

これだけは、私自身のプライドもあるので、今でも真
剣に対応しているのだが、本当に世の中が便利になれ
ばなるほど、忘れ去られていくものの多さに刹那さを
感じてしまう。

某海外のデザインの仕事で…今夜も深夜…現在午前3時。

安ワインというレギュラーガソリンを体内に注入した
ので、朝までOK状態で、頑張ります。

それでは、またこの場所でお会いしましょう。








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